COLUMN

DESIGN

造作収納で空間をバージョンUP

9年前に店舗を設計させて頂いた不動産会社オーナーから

「書類の収納スペースが足りなくなったのでなんとかしたい」

とご相談を頂きました。 

 

早速現地を訪問して現状の確認を行いながらヒアリング。 

 

執務空間に余剰は無いため収納家具の追加は無理があるし、

不動産業のため書面が必須とされる契約書類が多く、

書類の電子化による空きスペースの捻出は期待できない。

 

 外部ストレージの利用も検討したが、急に必要になった書類を

すぐに閲覧できない上にランニングコストも気になるとのお話。

 

 そこで「執務側ではなく、来客側に新規収納を設えたらどうですか?」

とご提案しました。

 

 来店客へのホスピタリティを重視するオーナーとしては、

動線が狭くなることや圧迫感が生じるのではないかといった心配から、

想定外の提案でした。 

 

既製家具の奥行きでは明らかに通路が狭まった印象になる上、

スッキリした壁面のイメージを損なうため、

奥行きを最小限に抑えて壁の木目に近い仕上げの

オーダーメイド収納を制作することになりました。

 


 

発注を頂いてから約3週間後に納品設置工事。

 

 幅が4.7mもありますので2分割で制作して

現地でジョイントします。

 

 ビス固定やボルト締めでのジョイントは

設置後に段差が発生する可能性があるため、

葉っぱのような形状の「ビスケットジョイナー」を用います。 

 

 

「ビスケットジョイナー」は正確な位置合わせの役割を果たして

現場作業の手間を軽減してくれる上に、

「ほぞ組」に近い強度の接合ができるという優れもの。 

 

さらにビス固定やボルト締めのように

収納内にビスやボルトが見えないメリットもあります。 

 

 

転倒防止対策と壁と家具の間にスキマがでないようにするために

収納内部から壁側にしっかりとビス留めしますが、

ビスの無骨な印象を軽減するためにビスキャップでカバーします。 

 

書類を入れてしまえば見えなくなる部分にも

プロとしても気配りを欠かしません。 

 

 

 収納扉の開閉は手掛け式を採用。

ハンドルが無いためスッキリした印象に仕上がります。

 

 また書類のセキュリティを考慮して

扉にはシリンダー錠を取付けました。 

 


 

丁番には開閉速度を5段階で調整できる

ソフトクローズ機構付きスライド丁番を使用します。

 

 完全に閉じる直前にブレーキが効いて

ゆっくりと扉が閉まる動作はとても高級感があり、

開閉音も気になりません。 

 

メーカーの企業努力でコストダウンしており、

弊社の案件ではソフトクローズ丁番を指定しています。 

 

 

およそ2時間で設置工事は完了。 

 

32センチという書類の入る最小限の奥行きにして、

新たに大容量の収納を確保すると共に、

木目壁に近いメラミン化粧板を採用したことで

従来の空間に違和感なく馴染む家具が出来上がりました。