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最新ホテルデザインを実体験 – 後編

7月15日に大阪市北区堂島浜に開業した
Zentis Osakaのインテリアデザインを担当したのは
ロンドンのデザインスタジオ Tara Bernerd & Partners

 

フォーシーズンズ、インターコンチネンタル、トンプソンズなど、
錚々たる有力ホテルブランドを手掛けており、
代表であるバーナード氏の美意識はラグジュアリーセグメントの
空間デザインで高い評価を得ています。

 

 

客室は3〜13階にスイート2室を含む212室を用意。

 

通路はプレーンなベージュ系で統一しつつも、
壁面腰高からのフットライトにより照度の濃淡をつけることで
単調になりがちな空間に深みを与えています。

 

またカーペットはおそらくTara Bernerd & Partnersによる
オリジナルパターンと思われ、職業柄、製造メーカーが気になりました。

 

 

客室最上階13階の東南角に用意されたSuite(スイート)は57㎡。

 

リビングの手前に配置されたテーブルにはチェア2脚が対面でなく
片側に並べてあり、天板にはアートブックが2冊置いてあります。

 

ダイニングテーブルとして実用的に使えるのはもちろんですが、
空間デザインのディスプレイとしての印象を大事にしていることが判ります。

 

大判で見栄えの良いアートブックや写真集はディスプレイツールとして活用されますが、
このようにテーブルに置かれる本を海外ではcoffee-table booksと言います。

 

 

リビングにはL字ソファと一人掛チェアが用意されていて、
ベッドルームとを仕切る間仕切壁に49インチTVと収納家具という構成。

 

Apple TVが装備されていますので、NetflixやYouTubeなどのコンテンツを
自宅感覚で視聴できます。

 

スペースにゆとりがあって落ち着けますが、
個人的にはテレビの高さがもう少し低い方がしっくり来ると感じました。

 

 

壁面に飾られた日本人作家によるアートによって、
室内がさらに上質な印象になっています。

 

改めて、空間におけるアートの重要性を再認識しました。

 

ベッドルームとリビングはスライドドアによって仕切ることが可能です。

 

 

海外のブティックホテルなどでは事例も少なからずありますが、
リビングからバスルームがシースルーで見えるのは、
日本ではまだまだ馴染みがない設計でしょう。

 

カーテンのような一時的に視線を遮るための配慮が
当然用意されているはず・・・
と探したのですが、そのような機能はありませんでした。

 

その思い切りに感心すると共に、
今後の運用を見守りたいと思いました。

 

次回の訪問時には
曇ガラスフィルムが貼ってあるかも知れませんね。

 

 

ツインタイプのベッドルームにもリビングと同じ49インチTVが設置されています。

 

壁面のアートは壁紙にプリントされたものではなく、
アーティストが直接描いています。

 

 

13階Suiteからの西側眺望です。

 

右側に阪神高速11号線、大阪市役所が見えます。

 

正面の高層ビルは2015年竣工の新ダイビルで、
その手前はANAクラウンプラザホテル大阪です。

 

 

こちらは面積25㎡のStudio(ステュディオ)と呼ばれるルームタイプ。

 

コンパクトな空間に上質な世界観を表現しつつ、
必要な機能をスタイリッシュにパッケージングしています。

 

 

Studioにはバスタブは無く、広めのシャワーブースです。

 

Suiteと同様に2方向シースルーになっています。

 

 

備え付けのハンガーからも拘りが伝わってきます。

他では見たことがないデザインです。

 

 

室内の木目は控えめで上品な表情。

 

Zentisのために制作されたオリジナル木目シートと思われ、
方向に変化をつけたデザイン貼りを施しています。

 

気がつく人は数少ないと思いますが、
ドア枠にもパターン貼りをシンクロさせていて、
目利きの感性をくすぐるディテールにバーナード氏の力量を感じます。

 

 

家族5名前後での宿泊ニーズに対応するために、
SuiteとStudioはコネクティングで使用できるように
設計されています。

 

このグレード感とロケーションに対して
料金レートは抑えた設定だと感じました。

 

パレスホテルの新ブランド Zentis Osakaでは、
確かに感性を心地よく刺激してくれる工夫が随所に感じられ、
それでいて欧米のブティックホテルにありがちな
押し付けがましさが無く、自然体で寛げる空間でした。