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伝え方の心得-3 経年変化

空間デザインはフルオーダーメイド。

 

無限の選択肢から自由に創り上げて行くプロセスは
お客様にとってワクワク感を伴うポジティブな体験そのものです。

 

しかし情熱を注いで出来上がった空間は
真新しい状態を永遠に維持できません。

 

言うまでもなく、完成した瞬間から、
空間は少しづつ経年変化していきます。

 

変化のスピードは使用環境、素材の特性や
施工方法などによって様々です。

 

従って、我々設計者は素材の耐候性、耐久性や
耐用年数を考慮しなければなりませんし、
変化後の状態についての知識も求められます。

 

そして大切なのは、
計画の初期段階で経年変化への価値観を
クライアントと共有すること。

 

例えばジーンズの嗜好なら、
生デニムのパリッとした風合いが好みなのか?
素材の色落ちを楽しむのか?
予めエイジング加工された製品を選ぶのか?

 

 

素材にそれほど拘りは無いが、
清潔感や完成時の状態を維持したい欲求が強いとしたら、
メラミン化粧板などの人工製品で木目や素材の表現を代用して、
汚れや傷が目立たないように注意しながら
高耐久性でメンテナンス手間の掛からないように計画します。

 

 

本物嗜好で素材特有の経年変化を許容できるなら、
天然木やステンレス鏡面、モルタルなどの
デリケートで傷つきやすい素材も敢えて取り入れて、
時間と共に表情を変える設計を試みます。

 

 

最初から使い込まれた雰囲気を表現する場合、
古材や劣化加工された様々な製品を採用したり、
エイジング塗装などでの表現が可能です。

 

 

空間を創り上げるプロセスでは
完成時にフォーカスしがちです。

 

けれども完成後の時間軸にも充分気を配り、
クライアントとのコンセンサスを得ることが
空間の価値を高めます。