古墳時代の埴輪の服装や飛鳥、奈良時代の染織品にも
形象が見られ、「石畳」や「霰(あられ)」と呼ばれた模様。
江戸中期の歌舞伎役者「初代 佐野川市松」が
この模様の袴を着て出演した舞台が大流行したことで、
現在の呼び名が定着したという伝統柄「市松模様」。
この「市松模様」には、
柄が途切れることなく連続する様子から
「永遠」や「繁栄」の意味が込められており、
縁起の良い日本古来の模様とされています。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のエンブレムは
日本の伝統を連想させる「市松模様」をモチーフとして
美術家・野老朝雄氏がデザインした「組市松紋(くみいちまつもん)」。
形の異なる3種類の四角形で構成される柄の
テーマは「個と群と律」
3つの異なる四角形が国や文化、思想などの違い、
つまり多様性を示しており、
「角を持つ図形もルール(律)をもって集まれば
「和/輪」を成せるのではないか」という着想から生まれたそうです。
オリンピックのエンブレムは和を意識した円形、
パラリンピックのエンブレムは上昇を思わせる上部が空いた形で、
両者ともにパーツ数を全く同じにすることで
「平等」を表現していると野老氏は解説されています。
エンブレムに採用された日本の伝統色「藍色」は、
かつて武将たちに愛された「かちいろ(勝色 / 褐色)であり、
どんな環境下で見ても映える色・強い色。
この藍色のCMYK(印刷インキ色の配分)は、
C=100、K=50、M=86と決められていて、
エンブレムのスケール感と同じ比率
(四角形3種の比率は小1:大2:中√3)になっており、
ここでも「律=ルール」が存在するという
野老氏の徹底したこだわりようが伺えます。
大会で使用される表彰台のデザインも担当した野老氏は
慶應義塾大学環境技術部教授田中浩也氏の協力を得て、
「市松模様」を3Dプリンターで立体造形化。
「市松模様」のパーツを組み合わせた
立方体(キューブブロック)を連結して構成された表彰台は、
台の側面にも立体化した「市松模様」が見られます。
田中氏がYouTubeで公開している
コンセプトムービー「HARMONISED CHEQUERED PODIUM」。
幾何学の線から「組市松紋」が生み出され、それが立体になる過程、
3Dプリンターによるパーツ造形の様子や
「組市松紋」のキューブをつなぎ合わせることで、
複数人が表彰される競技にも対応した秀逸なデザインであることが、
わかりやすく表現されています。
https://youtu.be/eq3iIQu-jvQ
また、表彰台の素材は「みんなの表彰台プロジェクト」によって集められた
使用済プラスチックを使用しているほか、
五輪マークなどのシンボル素材には東日本大震災の被災地に建てられた
仮設住宅のアルミ廃材を再利用しています。
大会に使用する表彰台を3Dプリンターで製作したのは世界初で、
市民参加型のプロジェクトによる表彰台製作は大会史上初とのこと。
日本ならではの伝統、最新の技術、持続可能な社会への配慮など
東京2020大会の「市松模様」の表彰台は
様々なストーリーによって具現化された
素晴らしいプロダクトだと思います。
東京2020オリンピック表彰台